心冠状動脈硬化症 (coronary artery disease; CAD) は心臓へ 栄養や酸素を運ぶ血管がコレステロールや脂肪の沈着で硬化し、血 管内腔が狭窄する疾患です。 この動脈硬化により心筋虚血を引き起 こし、心筋梗塞につながり左室心不全、または危険な心室性不整脈 を起こし、生命に関わる病気です。 動脈硬化は、心臓のみならず、全身に起こる現象で、大動脈瘤や 脳卒中を起こす危険因子の一つでもあります。
動脈硬化を起こす主な原因は、高脂血症、喫煙、高血圧、糖尿病な どの長年の生活習慣病であり、遺伝が関与するものもあります。 以前、アメリカ人の CAD 死亡率は日本人と比べて、3倍から5倍多いという データがあります。(circ.ahajournals.org/content/118/25/2725.full)アメリカ人が多く CAD を患う要因は主に食事習慣や肥満だと考え られています。
治療に関して循環器専門医の意見はさまざまですが、CAD をもつ 患者の冠動脈が、ある基準以上狭窄している場合、経皮的冠動脈拡 張術 (percutaneous coronary intervention; PCI) という治療が 勧められます。PCI は大手術である心臓バイパス(天皇陛下が2012 年に受けられた)よりは安全な治療法ですが、それでも時には合併症 が起こります。 2007年に New England Journal of Medicine に掲載された研 究では、冠状動脈硬化症の治療である薬物療法と PCI とを比べまし た。(www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa070829) 薬物療法はアスピリン、スタチン(例:Crestor, Lipitor 等)、および降 圧剤である ACE 阻害剤や β 遮断剤の投与でした。この研究による と、PCI と薬物療法は、安定している虚血性心疾患に対しては、同じ ような治療効果、死亡率があるという結果でした。