Q. 心不全とはどんな病気ですか?
A. 心臓は、収縮と拡張を繰り返すことで血液を全身に送るポンプの働きをする臓器です。心不全とは、この心臓のポンプとしての機能が低下する病気です。血液の流れが滞るために、息切れや、体のむくみが起こり、悪化すると命にかかわることもあります。肺や全身に血液が溜まることから、うっ血性心不全ともいわれます。
心不全は加齢とともに発症する病気の一つです。社会の高齢化に伴い世界的な患者数の急増が予想され、こうした状況を感染症の急速な広がりになぞらえて「心不全パンデミック」と呼び、対策が急がれています。
日本心不全学会によると、日本における新規患者数は2005年に約100万人でしたが、20年には120万人に、30年には130万人に増えることが予想されています。
Q. 心不全の原因は何ですか?
A. 最も多いのは心筋梗塞です。心筋梗塞とは、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈が動脈硬化などで閉塞し、心筋の一部が壊死する病気です。心臓の中は4つの小部屋に分かれていますが、そのうちの「左心室」が収縮できなくなり、心不全が発症します。
次に多い原因が、慢性的な高血圧です。重度の高血圧を放置すると、心臓の左心室に過剰な負荷がかかり続け、心筋が次第に弱くなるからです。心臓の部屋の扉にあたる「弁」、中でも「大動脈弁」が正常に開閉できなくなり、血液の流れが悪くなる大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)の場合でも、左心室に負荷がかかり同じような状態になります。高血圧や弁の異常(弁膜症)によって心臓の「左心房」が肥大し、心臓の収縮と拡張のリズムが乱れる不整脈を起こして、心不全になることもあります。このような不整脈を、心房細動と言います。
さらに、肺の血管が詰まる肺塞栓症(はいそくせんしょう)、いわゆるエコノミー症候群も、心不全の原因となることが知られます。心筋の病気、異常たんぱく質が臓器に沈着するアミロイドーシス、先天的心臓病、また稀ですが、肺や心膜の病気も心不全の原因として挙げられます
Q. 心不全の主な症状は何ですか?
A. 心不全は、心臓が十分に収縮できなくなる「収縮不全」と、心臓が十分に拡張できなくなる「拡張不全」に大別されます。 それぞれ症状や予後は異なりますが、心臓のポンプとしての働きが低下することにより、血液が肺や全身に溜まり、心臓から送り出される血液の量も減ることで、全身にさまざまな症状が現れます。
3カ月以上続く慢性的な乾いた咳(熱が同時に出ない)、けん怠感、食欲不振、運動したときのひどい息切れ、くるぶしの周りや足の甲、下肢のむくみなどが初期の主な症状ですが、軽い心不全の場合、症状がほとんど出ないこともあります。たまたま受けた検査で心臓肥大や不整脈、頻脈、心臓の雑音などが見つかり、心不全と診断される人もいます。必要に応じて胸部エックス線検査、心電図検査、血液検査、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査(血流を調べる検査)などを行い、診断を確定します。
心不全が進行すると、息切れやむくみは悪化します。患者によっては肺の方に血液が逆流して水分が溜まる「肺水腫」や、意識障害の一種であるせん妄、腎機能障害、肝臓肥大、腹水などが起こります。収縮不全の場合、命にかかわるような不整脈や、危険なレベルの低血圧に陥ることがあります。対照的に拡張不全は、症状が比較的軽そうに見えますが、入退院を繰り返しながら状態が徐々に悪化します。
心不全の原因によっても症状は変わります。例えば急性心筋梗塞の場合、胸が痛くなり、体をあまり動かさない状態でもけん怠感や呼吸困難が起こります。息切れがひどく、就寝時は頭や上半身を枕で高くしないと眠れないという症状も、この場合に典型的です。
Q. 心不全はどのように治療しますか?
A. 治療方針を決めるには、心不全の重症度、原因、合併症を知ることが大事です。特に原因を速やかに解消することは重要で、原因を放置すると入退院を繰り返し、予後を悪化させることになります。